東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センター隔離圃場におけるRubisco酵素過剰生産及び生産抑制イネの栽培の紹介

研究目的

私たちは、イネの個葉光合成の改善と生産性の向上を目指して、光合成炭酸固定酵素Rubisco (ribulose-1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase) を増強する研究を行っています。

遺伝子組換え操作によりRubisco酵素を過剰生産させた形質転換体イネと逆にRubiscoの生産を抑制した形質転換体イネを作出しました。これら2系統のイネと非組換えイネとを圃場レベルで比較栽培することにより、Rubisco量の増減が、イネの個体生育と収量に及ぼす影響を評価したいと考えています。

 

第一種使用規程申請

初めに、隔離圃場で遺伝子組換えRubisco酵素過剰生産及び生産抑制イネを栽培するにあたり、文部科学省及び環境省より「遺伝子組換生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律に基づく第一種使用規程の承認 (第一種使用規程承認)」を得ました。次に、交雑及び混入防止措置、種子、種苗、収穫物の運搬及び保管、さらに、圃場や収穫物の残渣処理に関して明確に記載した「平成28年度遺伝子組換作物の栽培計画書 (http://www.cgr.tohoku.ac.jp/topics/img/saibai160606.pdf)」を宮城県に提出、その後、宮城県農林水産部農芸園芸環境課環境対策班評議委員会の審査を受け、隔離圃場における当該遺伝子組換えイネの栽培許可がおりました。

 

植物材料

隔離圃場における試験栽培には、以下の第一種使用規程承認作物の2系統を用いています。

(1)          Rubisco過剰生産イネ (RBCS2-sense, Oryza sativa L.) (Sr26-8)

Rubiscoの小サブユニット遺伝子RBCS2をイネ(品種:能登ひかり)にセンス方向に導入し、Rubisco酵素のタンパク質量を増加させた系統。

(2)          Rubisco生産抑制イネ(RBCS2-antisense, Oryza sativa L.) (AS-71)

Rubiscoの小サブユニット遺伝子RBCS2をイネ(品種:能登ひかり)にアンチセンス方向に導入し、Rubisco酵素のタンパク質量を減少させた系統。

上記2系統の組換えイネと親株である能登ひかりを隔離圃場で栽培し、定期的に生育及び収量調査を行う予定です。これらの結果より、イネのRubiscoの増減が、直接、生育や生産性に与える影響を評価したいと考えています。

 

栽培状況

l  4月中旬

東北大学大学院農学研究科のP1P温室にて、Rubisco過剰生産及び生産抑制、さらに、コントロールとして使用する野性型(能登ひかり)の育苗を開始しました。




 

l  5月中旬

東北大大学院農学研究科のP1P温室から川渡フィールドセンターの隔離圃場まで幼苗を移送した後、田植えを行いました。移送に関しては、形質転換イネの幼苗をプラスチックコンテナに入れ、さらに、シートで包み、慎重な移動を心がけました。




 

l  8月上旬

花粉飛散及び鳥獣害防止対策として、2 x 2 cmメッシュの防雀網を、栽培区画に設置しました。出穂期前に防雀網の設置を行うことにより、花粉の飛散をネット内に抑え込む効果があります。




 

l  9月下旬〜10月上旬

稲刈りの予定。




 

お知らせ; 隔離ほ場におけるRubisco過剰生産及び生産抑制イネの栽培の様子は、東北大学遺伝子実験センターのHPでもご覧いただけます。